桂新堂株式会社様

美味しさに妥協せず、日々の暮らしを豊かにする「海老御菓子」をつくり続ける

代表取締役社長 光田侑司様

えびせんべいから海老菓子へ

桂新堂様は長い歴史の中でどのように変化されてきたのでしょうか。例えば、お菓子自体は時代と共にどのように変化してきましたか?

光田様:私が子供の頃と比べると、扱っている商品のほとんどが変わりました。
当時は、桂新堂のえびせんべいは袋菓子として売られていまして、袋ものの菓子というのは、例えば一袋で二百円というように、安い価格でしか売れません。セールや実演催事などを行うと大きく売上が伸びるのですが、数をさばかなくてはいけない。当時はとても大変だったと聞いています。
先代が社長に就任し、現在の「炙り焼き(当時は蝦焼菓(さやか))」やえびを姿そのままに焼き上げた「姿焼き」を開発したことにより、「えびせんべい」から「海老御菓子」と呼ぶようになりました。これらの商品が非常によく売れたことがきっかけとなり、東京での出店が実現しました。

あられ焼き・姿焼き・炙り焼き

海老御菓子に進化させる上で、一つひとつの商品にストーリーを携えることもしました。
それまであられ・せんべい業界は一年中商品が変わらないのが普通でしたが、業界で初めて季節の味わいやモチーフを取り入れたお菓子づくりをしました。
当社がつくる姿焼きや季節感を取り入れたお菓子は芸術と呼ばれる程良いものにしたいと考えており、商品を作品と呼びはじめたのもその頃です。

時代に合わせて商品の形は変わったものの、えびせんべいの製法は大きくわけて一度焼きか二度焼きの二種類しかなく、その焼き方をベースにしているという点で製法は大きく変わっていません。

二度焼き、一度焼きはどういったお菓子ですか?

光田様:当社の商品で言えば、プリントが施されている白いえびせんべいや季節の味わいが楽しめる小さなえびせんべいは一度焼き、それ以外はほとんどが二度焼きです。
一度の焼成で仕上げるものを一度焼き、焼ききらずに乾燥(熟成)させてからもう一度火入れするものを二度焼きと言います。
炙り焼きは、伝統的な製法でつくる二度焼きのお菓子です。
えびのすり身に火を入れ、乾燥させたものを再度炙って食べるという珍味的なものが元となっています。

季節の作品 夏きらり

教育で進化するおもてなしのコミュニケーション

お菓子のおいしさはもちろん、ECサイトのレビューを見ると“手書きのお手紙”など、お客様とのコミュニケーションも丁寧だと喜んでいらっしゃるお客さまが多いですね。

光田様:お客様とのコミュニケーションについては、ECであっても店舗であっても大事にしています。それだけの価値がある商品を提供していると思っていますので、コミュニケーションもお客様に満足していただける品質を目指しています。
接客については、外部の講師を迎えて販売職の社員が全員参加する日帰り研修を実施しています。内容は、講師が自分の接客体験の中で生み出した技術を体系化した“カウンセリング販売”という手法のノウハウを伝えるもので、昨年からレベルを基礎編、標準編、応用編の三段階に分けて学んでもらっています。
最近では、研修に参加した社員の会話の中で、講師から教えてもらったキーワードが出るなど、研修の内容が根付いていると感じます。

働く仲間全員が働きやすい会社を目指す

女性の活躍が推進されている中で、桂新堂様は女性従業員比率が高いのも特徴だと思います。女性活躍について取り組まれていることはありますか?

光田様:まず、女性も男性も老人も若者も皆が活躍できる社会をつくる必要があると考えています。
女性に限った話をすると、当社は従業員の約80%が女性なので、女性が働きやすい環境を整えるため、結婚・出産などライフスタイルが変化してからも安心して働ける制度を充実させています。
また、当社の従業員の中には定年の壁を越えて、半世紀以上働いて熟練した職人技を培った人もいますし、一度会社を辞めたものの戻ってきた人もいます。そのように多様な人材がいるというのは強みだと感じています。
従業員と一生を共にできる会社を目指し、長く働きたい従業員の為の取り組みをこれからも行っていきます。

企画・広報 主任 安田真菜様

真剣に“美味しい”を追求する

これから注力したい取り組みはありますか?

光田様:食べ物を提供する企業として私たちが一番大事にしているのは、 やはり“美味しい”ということです。美味しさには一切妥協せず、これからも真剣に向き合います。
また、口コミ等の情報伝達・発信は昔ほど簡単ではなくなっていますので、SNSなど多様になってきている発信メディアについても勉強していく必要があると感じています。
美味しいことだけにあぐらをかくことなく、新しいことも学び、取り入れ、一人ひとりのお客様に丁寧に届けていきます。

美味しいということを守っていくことは大変なことと思いますが、“美味しい”ものをつくる、また、“さらに美味しく”するというときに、味というものは何で決まるのでしょうか?

光田様:美味しいというのは数値化できないので、とても難しいです。
当社のお菓子の味は開発部が提案や改良を担っています。
味と一概に言っても「香り」や「食感」など複数の要素で構成されているので、これなら自信をもってお客様にお届けできると社内で認められるまで幾度となく試行錯誤を繰り返します。
何を美味しいと思うかは個人の嗜好の問題なので難しくもありますが、商品として届けない限り食べてもらう機会は存在しませんので、ウェブとリアルの店舗を使って、食べてもらえる機会を増やす方法を模索しています。
当社で言えば、幸いにも多くの店舗に加え、すばらしい取引先の皆さまもいらっしゃるので、力をお借りしながら何ができるのかを考えます。

社長に就任された光田様自身の食に対するお考えをお聞かせください。

光田様:最近、「食」に関して気づいたことが二つあります。
一つ目は、同じ品質のものをつくり続けることの難しさです。
現在、えびせんべいづくりを勉強しなおしていて、その延長で料理にも挑戦しています。チャーハンをよくつくるのですが、同じ食材を使い、同じ手順で作っているはずなのに、毎回同じ味にはならないのです。しかし、商品としてお客様にお菓子をお届けする以上はどんな時でも同じ品質でお届けしなければなりません。料理の経験を通じて同じ品質のものをつくり続けることの難しさに気が付きました。
二つ目は、日常生活の中にある食を継続する大変さです。
先日、工場を訪れた際に従業員が持参したお弁当を食べていたので話していると「毎日お弁当を用意していますが、冷凍食品ばかりです」と言うのです。例え冷凍食品を使用したとしても、毎日お弁当を用意し続けることは簡単なことではないと想像しただけでわかります。従業員との会話を通し、日常生活の中にある食を継続する大変さにも改めて気が付きました。

食べることは、生きていく上でかかせない行為ですが、当社はお菓子という嗜好品を提供しています。
嗜好品は毎日の食とは違い、日々の暮らしを豊かにするものだと考えます。それを思うと、当社の商品が常に生活の中にあり続けるにはどうしたらよいかをすごく考えます。
難しい問題ではありますが、日々の経験や発見を全て美味しいお菓子づくりにつなげていきます。

左から Eストアー 豊島 桂新堂 安田様 桂新堂 光田様 Eストアー 高部
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