⼸道具店 翠⼭(すいざん)様

110年続く⼸道具店

宇佐美様

「⼸道具店 翠⼭」は、⽇本の伝統⽂化である⼸道で使⽤する、⼸、⽮、⼸がけ(ゆがけ)などの⼸道具を扱うお店です。お話を伺った宇佐美さん、宇佐美さんのお⽗さま、おじいさまは、みなさん範⼠や錬⼠など、それぞれが称号を持つ⼸道⼀家でもあります。それゆえ、翠⼭で取り扱う⼸具は、店主が使って良いと思えるもの、お客さんに⾃信を持ってオススメできるものに厳選して品揃えされています。⼸道をしない⼸道具店が⼤半を占める中、実際の使い⼼地を知り尽くしたお店から商品を購⼊できることは、お客さんにとっても⼤きな安⼼感となっており、翠⼭が⼸道具店として110年もの間お客さんの支持を集めているゆえんです。

偶然うけた⼸道具の修理から始まった

⼸道具店としてのはじまりについて教えてください。

翠⼭の創業が明治36年で、現在110年くらいになりますかね。私の曾祖父からはじまっています。最初は⼸道具ではなく、⾰⾜袋、今でいう靴の製造を⾏っていました。その頃、たまたまこの近くに⼸道をされている⼈たちがいて、「⼸がけ(ゆがけ。かけとも呼ぶ。)」という、⼸を引く際に右⼿にはめる⾰製の武具を修理に持ち込まれたのがきっかけで、⼸具業にはいっていきました。なんでそのまま靴屋さんにならなかったの?と思いましたが、転機だったんでしょうね。(笑)

⼸がけは、⼀枚の⿅⾰から作られる⼿袋状のもので、右⼿親指の付け根に弦を掛けて⼸を引く際、弦の摩擦から指を守るために使います。現在はマシンメイドのものが⼤半ですが、うちで作っている⼸がけはハンドメイドです。1個作るのに約ひと⽉はかかるため、年間数個しか作れません。また、オーダーメイドのため、注⽂をいただくと、まず最初に使う⽅の⼿のサイズをもとに⽊型を作るところからはじまります。機械を使わないので、成形するにも⽕であぶってしめたり、もち⽶で接着したりと、⼯程の⼀つ⼀つに時間も⼿間もかかります。そのため、マシンメイドだと4万円ほどの⼸がけが、かけ師がつくると15万円ほどになります。ご注⽂は、年数にして10年くらい⼸道を続けていて、五段くらいの⽅が、⾃分にあった⼸がけを求めてというケースが多いですね。)

親⼦三代が⼸の達⼈

宇佐美さんは⼸道もなさっていて、かなりの腕前と伺いました。

曾祖父はまったく⼸道をしなかったんですが、「⼸具を扱うんだったら、実際に⼸道もやっといた⽅がいいんじゃないか」ということで、祖⽗の代からは⼸道家としてもスタートし、私で⼸道家3代⽬になりました。
⼸道には技能や功績に応じて、級位、段位、称号が授けられます。級位は下から5級から1級まで、段位は初段から⼗段まであります。称号には、錬⼠、教⼠、範⼠の3つがあり、称号を授かるには五段以上の段位を必要とします。祖⽗は範⼠九段まで⾏きまして、⽗も現役で範⼠⼋段、県連会⻑も務めています。そして私は錬⼠五段で、いま六段の試験を受けているところです。実は、3代続いて称号を授かったのはうちだけなんです。ですから、⾯⽩いことに、インターネットで「⼸道 宇佐美」で検索してみると、おおもとの⼸具屋ということよりも、⼸道家としてのほうが、検索結果がダーッとでてくるんです(笑)

でもそれは、⼸道をやっていない⼸具店さんが9割というなか、我々のように⼸道をしている⼸具店で武具を買いたいというお客さんも多くいらっしゃるということだと思ったので、インターネット販売を始めるきっかけになりました。

紫の紐にも意味がある

翠⼭さんの⼸道具へのこだわりを教えてください。

最近、⼸道具としてあまり適さないような、素材や⾊を使った⽮などを売っているお店も中にはありますが、我々は、そういったものはナンセンスで、⽇本の⽂化的に間違いがないもの、⼸道⼈として、新しく始める⼸道⼈に対して、きちんとしたものを提供できるような品揃えにしようという想いで取り組んでいます。道具で⽬⽴っても仕⽅がないので。
例えば、⼸がけには、基本的に紫の紐を使います。柔道での⿊帯にあたり、有段者の意味になるんです。そして、⾊のルーツたどると、冠位⼗⼆階の⼀番上の⾊、⽇本⽂化において⼀番⾼貴と考えられる⾊なんです。だから有段者には紫⾊の紐を使うのです。
でも、最近の⼸具を⾒ていると、⽮の⾊が真っ⾚だったり、アニメキャラクターをほうふつとさせるカラーリングのものもあります。売れればいいというスタイルですよね。でもそういう⼸具が当たり前になって、格好いいと思われるようになってしまうと、本来守るべきもの⼸道の精神が守れなくなるので、⼸道という⽂化や業界が弱くなるんです。だからこそ、本物にこだわり、⽇本の伝統を繋いでいくため、我々は⼀線を超えないようにという意識をもっています。たぶん⾃分が⼸をひいているから、よりその思いが強いんだと思うんですけどね。

まっすぐに、正しく、伝えていく

これからどんなことに挑戦したいですか?

考えているのは、もっと⼸道そのものの魅⼒を多くの⽅に伝え、当社としても売上規模を今の倍くらいにしていきたいということです。その点、実店舗よりも通販の⽅が、伝えたいことをテキストにして、きちっと活かすことができるんです。接客ももちろん⼤事だと思うんですが、やっぱり伝えたい情報がきちっと残っていく環境は⼤事だと考えています。

今年の1⽉から⼸道具のコラムみたいなページを増やしていってます。そこには⼸具を購⼊するためのプロセス、道具の使い⽅や特徴などを書いています。ホームページに書いておけば情報が残りますし、⼝で⾔っていると、⼈から⼈に伝わる間に⾔葉が変わってしまうこともありますが、テキストであれば変わりません。
我々が⾔いたいことや真意を正しく伝えるためにも、インターネットでの情報発信には⼒を⼊れていきたいと思います。そして、翠⼭だからこそ伝えられるコトを、将来的にはしっかりとしたボリュームにしていこうと思っています。

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