真心が伝わるあたたかな顧客対応とECサイトはどのようにして融合したのか
注文と問い合わせの〝窓口〟として位置するECサイト
御社は、インテリアメーカーの印象が強い方も多いと思いますが、介護用ベッドの開発や福祉用具の販売もかなり長くされていますよね。
はい、2代目の社長が40年前に「フランスベッドメディカルサービス」という医療・介護用ベッドに特化した会社を立ち上げまして、ご高齢の方や在宅医療をされている方に向けて販売を行っていたんです。少しして、お客様から「不要になった医療用ベッドを引き取ってもらえないか」と問い合わせを受けて、それをきっかけにレンタル事業がスタートしました。
昔はネット販売もなかったので電話や訪問営業がメイン。大人用オムツなど介護で必要な福祉用具や消耗品はカタログなどで販売をしていましたが、2000年を過ぎたあたりからオンラインでの販売も必要だろうということで準備を進め、2006年に「介護宅配便」というECサイトを立ち上げました。
その頃から弊社のカートをご利用いただいていますよね。長く使っていただいてありがとうございます。この頃にレンタルのECサイトも別に立ち上げていますよね。
はい、こちらは、介護だけでなく怪我などで一時的に身体が不自由になった方も利用されますので、レンタルの方も同じようにオンラインで受付ができたら便利だろう、ということで2009年に「介護レンタル.com」として立ち上げました。
レンタルとなると、社内の動きは販売とは少し異なりますか?
ECサイトを通じてベッドのレンタルの申し込みが入ると、まずはお客様の住んでいる場所から担当エリアを割り出し営業所に繋ぎます。その後、在庫を確認の上、お客様の元へ納品する段取りなどを電話で連絡してもらうという流れです。
売り上げとしては、お客様に納品する営業所に計上されるようになっていますから、社内での反発などが起こることもありません。
なるほど。ECサイトはあくまで窓口ということですね。お客様としても、問い合わせ先がひとつで、きちんとエリアの担当者に繋いでくれるわけですから、便利で安心ですよね。
全国に営業所はあるのですが、場所によっては我々の営業所が配送できないこともあります。その場合、パートナーシップを結んでいる外部の代理店さんに委託させていただくこともあります。レンタルに関しては、当社の営業所でも代理店受けでもレンタル価格は変わりませんから、社外からの反発もありません。むしろ、お互いに補填しあう関係ができていますし、弊社としても代理店さんとタッグを組めることは強みだと思います。
御社は歴史の古いメーカーですから、その分、ECへの参入という部分では、社内での反発も少なからずあったのかなと思うのですが、いかがでしょうか?
販売に関しては、ベッドなどは高額品になりますので現物を見せて売るのがセオリーですね。10年以上前は、1万円以上の商品はネットでは売れないと言われていました。
一方レンタルに関しては「介護保険対象商品」をネットで注文を取るということに、懸念はありました。
「介護保険対象商品」=「介護保険認定を受けている人が使うもの」が常識ですから、「介護保険対象商品」を一般の人(介護保険を受けていない人)に貸すことによって、トラブルが起きるのではないかという不安は当然ありました。
しかし実際にスタートしてみると、介護保険を使わない一般レンタルでも介護レンタルでも流れは同じ。お客様にお電話で納品日を連絡させていただき、福祉用具専門相談員の資格を持った人間がお届けに上がり、指定のお部屋に組立や設置を行い、使い方の説明をしてレンタル契約をする。
ある意味、介護保険を使わない方の方が、行政への請求の必要もないから業務の手間が省けて楽だったりします(笑)。 今では、営業所から「この商品もECに載せてよ」とか「この商品はもう在庫がないから非公開にして」などのリクエストが入るほどです。
いい連携ができているとのことですが、社内での他部署や営業所との関係を円滑に保つために心がけていらっしゃることはありますか?
偉そうにしない、低姿勢で行くってことですかね(笑)。
営業所は朝はケアマネさんや利用者様からの問い合わせが多いだろうから、急ぎの場合を除き、朝イチでの電話は遠慮しています。電話ってこちらの都合で相手の時間を奪いますからね。
それと、お客様から「現物を見てみたい」「介護保険について相談したい」など問い合わせをいただいたときは、できるだけお客様からの詳細な要望を確認してから最寄の営業所に引き継ぐようにしています。お客様も同じことを話さなくて済みますし、営業所の手間も省けますからね。
顔が見えないからこそ、体温を感じるようなアナログな対応を
御社の扱っている介護用ベッドという商材は、問い合わせも多いのかなと思うのですが、いかがですか?
おっしゃる通り、問い合わせは多いです。みなさん、何かしら必要に迫られて検索されていますから、問い合わせにはなるべく迅速に対応するようにしています。まずはメールでお答えしますが、どうしても伝わらない場合は直接お電話いたします。ECでありながら、やっていることはかなりアナログなんです
ECサイトの向こう側にちゃんと人がいる感じがしますよね。
メールも、話し言葉の方がスッと理解できることってありますから、丁寧さは残しながらもかしこまりすぎず、カジュアルな表現をあえて使うこともあります。ですます調だと硬くなってしまうので、語尾を「ですね」とか柔らかさをプラスしてみたりして、お客様によっていろいろ工夫しています。
実は、フランスベッドコーポレートサイトのメール問い合わせ窓口を10年以上やっていました。その経験もあってか、お客様の文章の読解力というか、行間を読むみたいなものは鍛えられていますね(笑)。文字通りに読むだけでなく、このお客様はこの文章の中で何を伝えたいのだろう、と考えて受け答えをする。そういうことは、顔が見えないからこそ、大切なことだと思います。
確かに、福祉用具用品や介護用ベッドを検討している方は、すでに不安を抱えていらっしゃることも多いですよね。そういう時に、メールでも電話でも、親身に対応してくださるのを感じると、どこかほっとされるのだと思います。
弊社には、外部委託コールセンターがありません。営業を経験している人は、お客さまと相対することになんの躊躇もありません。アナログな対応が染み付いているので、直接お客様の元に足を運んで商品説明したり、ご相談を承ったりします。
お問い合わせいただくことは、毎回同じではありませんし、必要な対応もお客様一人ひとりに対して異なります。その時その時で、お客様に必要なことが何なのかを考えて、それぞれに適した対応を心がけています。
なるほど!御社のスタイルが根付いているからこそ、アナログな対応ができているのですね。マニュアル通りではなく、一人ひとりに向き合うやり方、素晴らしいと思います。ちなみに、メールでの問い合わせなどのお客様とのやりとりは、社内やチーム間で共有されているのでしょうか?
はい、メールはチーム内で共有しています。しかしながら、お客様の声を社内で100%共有するというところまでは実現できていません。問い合わせを受けたことを情報として記録し、定例会議などで要望事項として報告している状況ですので、お客様の熱量は伝えきれていません。
製品に対する問い合わせやお困りごとも、クレームとして捉えるか、ありがたいお言葉として捉えるかで今後の改善は随分と違います。お客様の声をもっと今後のサービスの開発にも活かしていけるように、今後は他部署にも熱量を持ってシェアしていきたいですね。
よりわかりやすく商品の良さが伝わるECサイトを目指して
ECサイトスタートの時から弊社のカートは使っていただいていたのですが、2019年にECサイトのリニューアルのご相談をいただいたんですよね。
10年近くそのままだったのでデザインも古かったですし、スマホ対応もできていなかったのでリニューアルしたいと思い、デザインとサイト構成の相談をさせていただきました。わかりやすさ重視のシンプルなデザインをお願いして、とても見やすくなったと思います。
元の掲載内容はそのまま移行しつつも、カテゴリーを整理した結果、コンテンツのボリュームが少なくなったことが原因か、リニューアル直後は一時的に検索順位が下がってしまいました。しかし、後から商品の選び方を紹介するページや、お客様の声を集めたレビューページを追加することで、検索順位は回復しました。
訪問者数が急に減ると不安になってしまいますが、冷静なご判断でコンテンツを追加されたのはよかったと思います。ちなみに、お客様からの声はどのようにして集めていらっしゃるのでしょうか?
それは、こちらからお願いできそうなお客様にメールでご依頼させていただいています。インセンティブを設けることはできませんので、善意で書いていただいています。書いてくださった方には、感謝の気持ちでいっぱいです!
見返りなく書いてくださっているのは、むしろ、純粋な思いといいますか、信頼できる内容になりますよね。
何も特典など付けられないのは、申し訳ない気持ちもあるのですが、それは感謝のお気持ちをお伝えすることで許していただいています。本当にありがたいです。
リニューアルでは、商品の選び方についても一緒に再検討させていただきましたよね。
はい、Eストアーさんからのご提案で、ベッドを選ぶ延長で、オプションであるマットや手すりも選べるようにしたのは、とてもよかったと思います。自然な流れの中でマットや手すりも注文してくださるので、後からマットや手すりを注文し忘れていた、というトラブルも減りました。おかげさまで、1件の注文単価も上がっています。
最初の登録時点で、マットや手すりをオプションとして設定することで、ユーザーはベッドを選んだ流れで、自然とマットや手すりも選べるようになりました。マットや手すりが別注文であることに気づかない方も多かったと思うので、それが誘導できるように改善されたのは、ユーザーにとっても御社にとってもよかったですよね。
そういうユーザーにとっても便利になる仕組みをご提案いただけるのは、本当にありがたいです。
実は、まだ古い画像が残っているので少しずつ入れ替えたり、サイズや重量などの詳細な情報を追記したり、地道にアップデートを続けています。正直なところ、今は商品の機能についてもうまく説明できていないところがあります。弊社はものづくりの会社ですから、作り手目線での表現になりがちなところがあると思います。それを、使う人目線で伝えられるようにしていきたいですね。
商品を正しく知っていただくためにどのような伝え方をしたらいいのか、というのはひとつの課題です。お客様の労力は最小限に、理解に導いていく工夫は必要だと思います。そう考えると、動画なのかな、という気もしています。
確かに、今は商品を選ぶ時に、多くの人がYouTubeで検索をしてレビューを見ていると言います。以前は、WEB媒体やブロガーの比較記事を参考にしていた人も多かったと思いますが、今は動画による情報収集がポピュラーになってきているということでしょう。
弊社の商材もそうですが、介護ベッドなどは動きのある機能商品なので、それを説明するには動いているところをご覧いただくのが一番ですね。
テレビショッピングなど見ていると、質感を伝える表現力に感動することがあります。ベッドやマットレスも、質感の説明は大切になってきますから、物を触らずしてその物の質感まで理解できるように、わかりやすく噛み砕いて伝えられたらいいなと思います。
また、介護保険認定を受けなくても医療用ベッドを借りることができる、ということを知らない方も多いので、それを知ってほしいという気持ちはあります。商品理解のためにこのサイトを使っていただけたら、ケアマネジャーさんにリクエストを出すということもできるかもしれません。そういうサービス理解、商品理解を深めていただくためにも、今現在は、このサイト内の商品情報をよりわかりやすくすることに時間と労力をかけていきたいと思っています。
ちなみに、モールへの出店は考えていらっしゃいますか?
以前、モールに出店していた時期はありました。でも、やめました。モールは、すでに利用している方がたくさんいて、弊社のサイトを知っていただくにはいいと思いますが、外部リンクもできませんし、自由度が低く縛りが多いので、弊社のこの事業には少し使いづらいところを感じたためです。
弊社の場合は、オムツなどの消耗品も必要、ベッドも検討したいという方がいて、どちらかをきっかけに、双方を利用してくださるという方が多いです。そのため、自社サイトでは、消耗品の購入ができる「介護宅配便」と介護ベッドレンタルの「介護レンタル.com」に両サイトのバナーを貼って行き来できるようにしています。
弊社のスタイルにはモールよりも、自社サイトの方がやりたいことが実現できていると思います。独自性もだせますしね!
今あるECの形が完成形というのではなく、お客様が理解しやすく使いやすいサイトを目指してまだまだ改良の余地はあると思っています。また、Eストアーさんにもご意見頂戴することがあると思います。今回も、お話しながら課題が見えてきてよかったです!
そう言っていただけてありがたいです。対面と同じような心が伝わる対応の部分は残しつつ、よりお客様にとっても御社にとっても使いやすいECサイトにアップデートしていきましょう!またいつでもご相談ください。ありがとうございました!