「手間」をかけたアナログ対応が売上に繋がる成功事例を紹介
近年、多くのネットショップでチャットボットやFAQなどの自動応答システムが導入され、電話やメールといった有人対応の比重は年々小さくなっています。かつてはページ上部など目立つ位置に記載されていた電話番号も、現在ではどこにあるのか分からないということも珍しくありません。
しかし今回は、こうしたデジタルシフトの流れに逆行し、あえて電話対応を復活させたことにより機会損失を防いだ事例をご紹介します。
シフトする顧客接点
多くのネットショップで有人対応が縮小されている背景には、以下のような複数の要因があります。
コロナ禍が後押しした非対面化
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、実店舗の営業制限や外出自粛要請が広がり、消費者の購買行動は実店舗からオンラインへと大きくシフトしました。ネットショップの利用が増加した一方で、問い合わせ対応の負担も急増。人的対応だけでは対処しきれず、顧客満足度の低下を防ぐために、チャットボットやFAQなどの自動応答システムの導入が進みました。
さらに、テレワーク導入により物理的なオフィスに人員を配置することが難しくなり、リモート環境でも対応可能なチャットやメールの重要性も高まりました。
運営側の効率化とコスト削減
ネットショップにおける顧客対応は業務負荷が大きく、特に注文確認や配送状況の確認、返品・交換といった定型的な問い合わせに多くの人手を割くことは非効率です。これらを自動化することで、人件費の削減や業務効率化が図られています。
顧客体験の向上と利便性の追求
有人対応を減らすことは、必ずしも顧客体験を損なうわけではありません。むしろ以下のようなメリットがあります。
・24時間対応で即時解決が可能
チャットボットやFAQは24時間365日利用でき、営業時間に関係なく迅速な回答を得られます。
・待ち時間の削減
電話の待機時間やメール返信の遅延によるストレスを回避できます。
・自己解決志向の顧客に対応
簡単な疑問であれば、人と会話せず自分のペースで解決したい顧客層にもフィットします。
進化するテクノロジーの活用
AIチャットボットなど、近年のテクノロジーは進化を遂げています。
例)
・質問の意図を自然言語で理解し、的確な回答を提示
・簡単な注文やキャンセル処理の自動化
・オペレーターの知識差や人的ミスの回避
これにより「品質の均一化」と「即応性」を両立させた対応が可能となり、満足度を損なうことなく人的対応を削減できるようになりました。
有人対応の重要性は依然として高い
とはいえ、全ての対応を自動化できるわけではありません。以下のようなケースでは、有人対応が必要不可欠です。
・複雑な問い合わせ
・感情的な対応や共感が求められる場面
・高額商品・専門性の高い商品
顧客満足度や信頼獲得の観点から、有人対応は今後も完全にはなくならないと考えられます。
問い合わせが多い特殊商材での事例
有人対応の重要性が高い理由に「複雑な問題」「感情的なサポート」があると述べました。具体的にはどういったものがあるのでしょうか。事例とともにご紹介します。
今回ご紹介する事例の商材は、専門性が高く、問い合わせが多い特殊な商材です。問い合わせの多い内容は全て商品ページ内の商品説明欄やQ&Aに記載しておりましたが、前述の理由から内容や項目が多くなっておりました。また、商材単価は決して安くはなく、気軽に購入できるような商材でもありませんでした。
あえて手間のかかる電話問い合わせに繋げる導線を設置
こちらの店舗さんも工数削減の観点からページに記載していた電話番号を削除し、問い合わせはメールのみにシフトしておりましたが、電話窓口を無くして以降、問い合わせ自体は格段に減っていました。
メールでの問い合わせ内容は、Q&Aに記載されている内容を理解した上でくるものが多く、一見すると効率的な運営になったように見えました。
しかし、自社商品が難しい商材であることを踏まえると、商品説明やQ&Aだけでは理解できず、問い合わせまで辿り着けない、もしくは諦めてしまっている可能性を懸念しました。
そこで、試験的に電話番号をヘッダーに再掲載し、数週間にわたりデータを取得しました。

電話による問い合わせと注文が急増
電話番号を再掲載したところ、電話による問い合わせ件数と注文件数が2倍以上に増加。特に以下のような傾向が見られました。
・相談後に安心して注文に至る顧客が増加
・電話での会話から、サイト改善のヒントとなる情報を得られた
・特に初めての購入者にとって、人の声が「安心材料」になっていた
あわせて、問い合わせの質にも変化が見られました。
電話番号削除時:FAQを読んだ上での「より深い質問」が中心
電話番号再掲載後:FAQを読まずにすぐ相談するケースも増加
表面的には対応工数が増えたように見えますが、これまで「相談する前に離脱していた層」を拾い上げられたことの価値は非常に大きいと言えます。
電話対応の副次的な価値
電話番号を記載したことで、確かに問い合わせ対応の工数は増えましたが、それによって従来なら離脱していた層からの注文につながった点は見逃せません。ECでは実物を見られない不安がある中、電話での会話が信頼感の醸成や購入の後押しにつながったと考えられます。
また、電話だからこそ得られた顧客のちょっとした疑問や本音の声は、サービス改善のヒントにもなりました。単なる負担ではなく、直接のコミュニケーションだからこそ得られる情報と関係性が大きな価値を生んだ結果となりました。
アナログ対応が活きる商材
テクノロジーの進化により、一定の顧客対応は自動化で十分対応可能です。一方で、専門性が高い・価格帯が高い・不安要素の多い商材では、アナログな有人対応がコンバージョンに直結することもあるという好例でした。
Eストアーショップサーブでは、こうした「人の温かみを活かした顧客対応」の重要性にも注目し、担当制など、アナログ対応の価値を重視したサービス体制を整えています。まずはお気軽にご相談ください。