店舗からご家庭まで、こだわりの味と想いを届ける

株式会社カトープレジャーグループの多彩な事業の1つとして「つるとんたん」は独自の存在感を放っています。その起源は1978年、大阪での本格手打ちうどん店「本家さぬき」の開業に遡ります。1989年、大阪宗右衛門町に誕生した「つるとんたん」は、讃岐の製法と大阪文化を融合させた独自のスタイルで人気を博しました。「お客様の喜びを体現する」という理念のもと事業を展開し、特徴的な大きな器のうどんは、ブランドイメージとして定着しています。店舗展開に加え、EC事業にも注力し、つるとんたんならではの価値創造に取り組んでいます。
今回は、EC事業部の寒川様と中山様にブランドの歴史や理念、具体的な取り組み、今後の展望についてお話を伺いました。
つるとんたんのうどんや器へのこだわり関係
つるとんたんの特徴的な大きな器について教えてください。

寒川様:つるとんたんでは、お客様に喜んでもらうため、三玉(通常の三倍量)まで無料で提供しています。そのため、通常の器では入りきらず、事業を開始した当初は「金魚鉢」のような大きな器を使用していたんです。しかし、耐久性の問題で割れることがあったため、有田焼を使用するなど改良を重ねました。
現在は蓋付きで温度や香りを保つ工夫をした器を開発したことで、大きな器でありながら耐久性と保温性を兼ね備え、うどんが冷めにくくなっています。麺の長さも器のサイズに合わせて調整しており、バランスの取れた見た目と食べやすさを両立させています。
うどんへのこだわりについても教えてください。
寒川様:うどんの香りや食感を大切にしているので、生地を十分に熟成させ、手切りでうどんを作っています。讃岐うどんのようなコシのある麺と関西の昆布やカツオ風味が感じるだしを組み合わせるなど、独自の製法にこだわり続けてきました。
包丁切りにもこだわり、職人が丁寧にカットすることで、茹でた時にうどんの形がしっかりと保たれ、食感に変化をつけることができました。
製法へのこだわりがよくわかりました。
そのこだわりは実際に食べた時にどのような特徴となって表れるのですか?
寒川様:うどんはコシがあって長いため、一口で飲み込むことはできません。そのため、お客様が咀嚼する際に香りが立ち、より豊かな風味を感じられます。さらに、小麦をより長く熟成させることで、小麦本来の香りや味わいを引き出しています。
温度管理にも気を配り、お客様に提供する際は最適な状態になるよう考慮してきました。関西風のだしともよく合い、うどんとだしが一体となった味わいを楽しめます。こういった細かなこだわりが、他店との差別化につながっています。
店舗の味をECで忠実に再現するこだわりの製法
EC事業を始めたきっかけは何ですか?
寒川様:店舗をオープンさせたと同時にお土産コーナーで商品を販売していましたが、店舗の味をより多くのお客様のご家庭でも楽しんでいただきたいと考え、EC事業を開始しました。
当初は他社に製造を委託して半生うどんを販売していましたが、美味しさに納得できず、自社で製造することにしたんです。
店舗の味を再現する上でのこだわりを教えてください。
寒川様:店舗で大切にしてきた製法を、EC商品でも変わらず守り続けています。設備が限られている中でも、足踏みで生地を練るなど、手作業へのこだわりを欠かしません。足踏みすることで、様々な方向から生地に力が加わり、グルテンがまんべんなく均等に形成されるのです。これは機械製法とは大きく異なる点です。
例えばロール式の機械を使用すると、一方向にのみグルテンが発生し、他の方向にはほとんど形成されません。そうなると、麺の食べる側や角度によって食感や味わいが異なってしまいます。足踏みによって色々な方向から力が加わる手作業での製法は、この問題を解決し、均一で理想的な麺の仕上がりを実現できました。
だしの製造も店舗の作り方とほぼ同じ方法を採用しています。こうすることで、店舗で提供される味との一貫性を保つことができ、自信をもってECで販売できているんです。
送り主様の想いと商品を一緒に届ける
梱包・配送へのこだわりはありますか?
寒川様:EC事業では、店舗とは異なる接客方法の難しさがあるため、特に梱包と配送には非常にこだわっています。梱包では、クッションをしっかり入れ、お客様が開けた時に綺麗な状態で商品が入っているよう心がけているんです。
特にギフト商品の場合、送り主様の気持ちが込められていることを常に意識してきました。私たちは、その気持ちと商品が一体のものだと考え、どれだけその想いを形にできるかを大切にしています。また、包装紙も季節や贈答用に適した柄など、4種類ほど用意し、お客様の用途に合わせて選べるようにしています。
EC事業ならではの難しさもあるのでしょうか?
寒川様:ECでの販売は店舗と異なり、一度ミスをすると取り返しがつかないという特性があります。例えば、店舗であれば接客中に問題が発生しても、その場で対応し、お客様の満足を取り戻す機会があります。しかし、ECの場合は包装の間違いなどの1つのミスがお客様の信頼を失うことにつながりかねません。そのため、お客様の手元に届くまで、完璧な状態で商品をお届けすることが非常に重要です。
このような高い基準を日々維持し続けることは決して簡単ではありませんが、スタッフ全員がこの難しさを理解し、継続的に努力してきたからこそ、現在の品質水準を保つことができています。この「当たり前」の品質を保ち続けることが、お客様との信頼関係を築き、リピート購入につながると考えています。
丁寧に想いを込めて梱包や包装をする上で、つるとんたんならではの工夫はありますか?
寒川様:製造と梱包は基本的に別のスタッフが担当していますが、非常に限られたワンフロアのスペースで作業を行っています。この環境のおかげで、梱包担当者は製造の現場を間近で見ることができ、その大変さや作り手の想いを直接感じ取れます。その努力や大変さが分かるからこそ、つるとんたんの商品の価値をお客様に届けたいという想いが更に連鎖していくことで現場の一体感が生まれ、梱包作業の丁寧さにもつながり、全体的な質の高さが保たれているのです。

人生の節目につるとんたんを選んでいただける喜び
印象に残っているお客様とのエピソードはありますか?
中山様:ブライダル関連で印象的な出来事がありました。通常はブライダル商社を通じて依頼がくるのですが、新郎新婦様から直接お電話をいただき、結婚式で縁起物としてつるとんたんの商品を使いたいとのことでした。このように、人生の大切な節目でつるとんたんの商品を選んでいただけることは非常に嬉しく思います。

「もう一口食べたい」と思わせる秘訣は味の構築にある
季節メニューの開発プロセスについて教えてください。
寒川様:年4回ミーティングを行っており、各回で100〜200ほどの提案が出ます。その提案の中から、20~30程に絞り込んでいくんです。ミーティングでは、社員の意見も積極的に取り入れており、実際に食べた時の感想なども参考にしています。
つるとんたんらしさを保つ秘訣は何ですか?
寒川様:味のトーンを大切にしています。特に「つるとんたん」らしさを追求し、一度食べ始めたら止まらないような、ちょっとした中毒性を感じさせる味わいをベースに開発を進めてきました。例えばグリーンカレーうどんでも、最初に甘さがきて、その後辛さがくるなど、味の構築の仕方に特徴があるんです。この独特な味わいが「もう一口食べたい」と思わせる秘訣となっています。
お客様のシーンやニーズに合わせたメニュー
つるとんたんブランドの価値をどのように考えていますか?
寒川様:うどんを食べるシーンに適したメニューを提供することです。本町、北新地、六本木、渋谷、軽井沢など、各店舗で土地の特性に合わせたサービスを心がけています。大阪観光で来られたお客様や軽井沢でくつろぐお客様、銀座で接待をするお客様など、それぞれのシーンに合わせたメニューやサービスを提供しているんです。
この考え方は、店舗だけでなくEC事業も同じ方針で、お客様のシーンやニーズに合わせた商品開発とサービス提供を行っています。
ギフトとしての価値も重視しており、最近では賞味期限の長い乾麺を開発しました。これは、インバウンド需要に対応するためでもあります。訪日外国人のお客様が日本のお土産として持ち帰れるよう、賞味期限を延ばし、軽量化も図りました。
このように、お客様のシーンやニーズに合わせた商品やサービスを提供し続けることが、店頭でもECでも私たちの変わらぬ姿勢です。

お客様との対話を通じて商品開発の可能性を広げていく
今後のEC事業の展望を教えてください。
寒川様:ECでヒット商品を作ることが目標です。例えば、低糖質(ロカボ)など健康志向の商品開発にも取り組んでいきたいと考えています。お客様に、より美味しく、より手軽に楽しんでいただけるような商品開発をしていきます。
お客様からのフィードバックも活用していく予定なのでしょうか?
寒川様:そうですね。お客様の声をしっかりと聞き、商品の改善や新商品の開発に活かしていきたいと思います。「この商品はどうでしたか?」「美味しかったけど、ここを改善してほしい」といった言葉のキャッチボールを通じて、商品を改善し、次の提案につなげていくことを目指しています。
また、デジタル技術を活用して、お客様の購入履歴に基づいた提案ができるようなシステムの構築も検討しています。お客様とのコミュニケーションを大切にし、電話対応などでも丁寧な対応を心がけ、リピート購入につなげていきたいと考えています。
「店舗での味をご家庭でも」という想いを常に意識しながら、ECサイトで購入してくださったお客様に、ご自宅で美味しく・簡単に召し上がっていただけるための作り方や情報発信は引き続き大事にしていきます。
