株式会社五島軒様

変わらぬ味と変わりゆく形で、お客様へ喜びを届ける五島軒

株式会社五島軒様 販売部 販売課・リテール課 課長 西川裕哉様、販売部 通販・出荷事務課 通販担当 稲村公里様、Eストアー 枝松

1879年(明治12年)、函館の地に創業した株式会社五島軒。看板メニューのイギリス風カレーをはじめとする伝統の味を守りながら、140年以上にわたって函館の食文化を支え続けています。一方時代のニーズに合わせて、現在はECサイトでの全国展開やSNSでの情報発信など、新たな取り組みにも積極的にチャレンジしています。伝統の継承と革新への挑戦、そしてお客様との丁寧なコミュニケーションについて、販売部 販売課・リテール課 課長の西川裕哉様と、販売部 通販・出荷事務課 通販担当の稲村公里様にお話を伺いました。

ロシア料理とパンの店としてスタートした五島軒

五島軒の創業からの歴史について

西川様:五島軒は、1879年(明治12年)に創業しました。創業者の若山惣太郎は江戸の米問屋の長男として生まれ、商売の失敗を機に函館へ来ました。パン作りの技術を習得した若山は明治12年に富岡町(現・大町)でパン屋を開業したんです。

同じ年、箱館戦争で敗れてハリストス正教会にかくまわれていた五島英吉と出会います。五島はニコライ神父からロシア料理を学んでおり、この2人の出会いから「五島軒」が誕生し、函館でロシア料理とパンの店としてスタートしました。看板メニューのカレーが誕生したのは、2代目の若山徳次郎が東京の帝国ホテルで修行をしていた際、当時提供されていた欧風カレーのレシピを函館に持ち帰り、五島軒本店で提供を始めたのがきっかけです。その後、味の改良を重ね、現在の「イギリス風カレー」が生まれました。

挑戦をしていくことで、新しい刺激や喜びをお届けする

函館らしい雰囲気と昔ながらの味を大切に

長い歴史の中で守り続けていること

西川様:函館ならではの異国情緒溢れるシックレトロな雰囲気を大切にしています。レストランの空間は、函館の歴史と文化を継承する場所として、その世界観を壊さないよう心がけているんです。

また、カレーやビーフシチュー、カニクリームコロッケなど、昔ながらの洋食の味は特に大切にしています。例えばカニクリームコロッケは、以前は函館の漁師さんからヒラメの骨をもらい、魚の出汁(ポアソン)を作ってベシャメルソースのベースにしていました。現在は材料の入手が難しくなりましたが、昔と変わらない味、あるいはよりおいしい味を出せるよう、料理人が試行錯誤を重ねています。

伝統を守ることとニーズにマッチした新たな取り組み

西川様:新たな挑戦として、コロナ禍に新千歳空港へ新規出店しました。お客様が少ない時期だからこそ、1人ひとりを大切にした丁寧な接客を心がけてきました。メニュー開発から食器の選定、スタッフの採用まで、すべて1から作り上げ、店舗デザインにも昭和・大正のテイストを取り入れて五島軒らしさを表現しています。新しいことに挑戦する際も、五島軒の伝統や価値観は常に意識しているんです。

伝統を守ることは非常に重要ですが、伝統だけを守り続けると今のお客様のニーズにマッチしなくなってしまいます。また、挑戦をしていかないと事業の発展もなく、五島軒を愛してくださっているお客様に新しい刺激や喜びをお届けすることができません。常に新しいものへの挑戦は必要だと考えています。

自分ができることであれば何でもやってあげたい

全国のお客様へ届けるために始めたECサイト

稲村様:自社通販は以前から行っていましたが、より多くのお客様にアプローチするため、ECサイトでの展開を始めました。函館のお客様だけでなく、全国に住むお客様へ商品をお届けしたいという思いからです。現在は、五島軒の看板メニューであるカレーをはじめ、様々な商品を取り扱っています。特にカレー缶詰のアソートは、お客様自身で商品を選べるようになり、多くの方に喜ばれています。

メールや電話を通じたお客様との関係づくり

稲村様: 対面でお会いする機会が少ないからこそ、メールや電話での対応を通じて、お客様との関係づくりを大切にしています。よく購入してくださるお客様の名前は覚えているほどです。通信欄にコメントを書いてくださるお客様には、必ずひと言返信するようにしています。

自分ができることであれば何でもやってあげたいという気持ちで、お客様1人ひとりに向き合っています。ECサイトでの販売であっても、お客様に喜んでいただけることが何よりも大切だと考えています。

お客様の誕生日情報があれば誕生日カードを同封したり、メッセージカードを付けたりしています。また、お客様からメールでお問い合わせをいただいた際は、より丁寧な説明をさせていただくため、こちらから積極的に電話をかけ、包装方法や発送方法についてお伝えすることもあります。

特に年配のお客様は通信欄に記入するのが大変な場合もあるので、お電話での対応を心がけています。「函館の天気はどうですか?」といった世間話から始まることも多く、フレンドリーにお話させていただくことで、自然と他の商品の紹介にもつながっていきます。そういった何気ない会話がお客様との距離を縮めるきっかけになり、結果として売上にもつながっていくのが嬉しいです。

おいしさと環境配慮を両立したCRUMB+(クラムプラス)

西川様:CRUMB+(クラムプラス)という直売所をフードロスやSDGsへの取り組みの一環として始めました。例えば、ケーキを作る際の切れ端や、パイ生地の耳など、正規品としては使えないものを少しでも安く提供し、お客様に楽しんでいただきながら、環境にも貢献できればと考えています。

賞味期限が近いものや、形が少し不揃いなものもありますが、品質には何ら問題ありません。函館市や北斗市など、近隣にお住まいのお客様への還元という意味も込めて運営しています。
最近では認知度が高まってきており、「CRUMB+(クラムプラス)はいつやっていますか」といった問い合わせも増えています。

函館の歴史や文化と共に喜びを提供していきたい

今後の展開について

稲村様:今後はさらにECサイトに力を入れていく方針です。また、最近ではメディアやテレビなどへの露出も増やしています。費用対効果はまだ見えない部分もありますが、新しい取り組みにも積極的にチャレンジしています。

西川様:現在のECサイトのメインユーザーは本店で食事をされていた方や、かつて函館に住んでいた方など、長年五島軒を知っている50代、60代のお客様が中心です。デジタル機器になじみの薄い世代の方が多いため、ECサイトに対してとっつきにくさを感じる方も少なくありません。

しかし、この年代のお客様はギフトニーズが特に高く、贈り物を手軽に送れるECサイトへの潜在的な需要は大きいと感じています。そこで、使いやすさを丁寧に訴求していくことで、より多くの方にご利用いただけるようになればと考えています。

単純なことですが、常にお客様により喜んでいただきたい、どうやったら喜んでいただけるかを私たちは追求しています。

五島軒は一企業でありながら、函館の歴史や文化の担い手の一翼でもあると思っているんです。そういった部分をお客様に感じていただきながら、より大きな喜びを提供していけたらと考えています。

左から株式会社五島軒 稲村様、Eストアー 枝松

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