エンジニア志望だった店長が作る、最高のデコレーションケーキ
静岡県、浜松にある「デコレーションケーキ.com」は、その名の通りデコレーションケーキの専⾨店。
店長の鈴木さんは、もともとは機械⼯学出⾝。ケーキ屋さんには珍しい経歴の鈴⽊さんは、独⾃の技術を用いた「写真ケーキ」や「似顔絵ケーキ」を生み出しました。
「デコレーションケーキ.com」が⽬指しているのは、感動の瞬間を演出するための、特別なケーキ。
お客さんの評価も⾼く、通販だけでも⽉に150件以上のケーキの注⽂がある。なんとそれを店⻑と奥さん、職⼈2名のわずか4⼈でこなしているのだ。
贈った⼈も贈られた⼈も笑顔にする特別なケーキの秘密とは?店長の鈴⽊さんにお話を伺いました。
機械大好き少年が、お菓子の世界へ
鈴木さんがお菓子と関わることになったきっかけを教えてください。
実は、子供の頃は故障した機械をを修理する電気屋さんにすごく憧れていて、中古のラジオを買ってきては全部ばらして、そこからラジオを作るなんてことに熱中していました。でもその後、時代がガラッと変わって電気屋さんは単に家電を売るお店になってしまい、あれほどあこがれていた電気屋さんへの熱も冷めてしましました。
それでも学校を卒業したら働かなくちゃいけない。当時はものすごく不景気なこともあり、どうしようかと思っていたところ、清水でお菓子屋さんをやっていた親戚が規模を拡大するから手伝いに来いと呼んでくれて、お菓子の世界に入ることになりました。
私のこれまでを知っている友達は「なぜ?なんでお菓子屋になるの?」と驚いてました。
お菓⼦屋さんに⼊ってから、最初はお店を出店するときの出店屋みたいなことやっていました。しかしある時、製造部の⽅で、お店を開きたいという人たちが出てきたのでその方たちに出店を担当してもらうことになりました。すると、代わりに⼯場の中を仕切る⼈が必要になったのです。そんな時突然、社⻑から「鈴⽊、お前明⽇から⼯場やれ。」と言われてそれで⼯場に⼊ってみたのです。とはいえ、すんなりなじんだということではなくて、職⼈の世界って、腕がないと⾔うこと聞いてくれないです、誰も思うように動いてくれない。この状況でどうすればいいんだろうと考えて行きついたところ、とにかく腕をつけるしかないなと、一念発起したんです。それまで菓⼦を作ることは全く考えていなかったけど、菓⼦をつくる⽻⽬になっちゃったからやるしかないと。とにかく死に物狂いで⼀年間くらい菓⼦を作りました。それがきっかけで職⼈になったんです。
友達はみんな俺の性格を知っていたから、お菓⼦屋さんになるとき、たぶん何年も持たないなと思っていたみたいです。ところが、今では私が菓⼦屋で一番⻑くなりました。(笑)
町が変わり、人の流れが変わり、街のお店も変化を余儀なくされた
ネット通販をはじめられたきっかけを教えていただけますでしょうか︖
リーマンショックの時にものすごく影響をうけたんです。
もともとお店がある⾼丘はホンダ⾃動⾞のお膝元なんです。近くにホンダの創業の会社があり、町自体が本⽥技研で持っているようなものでした。それが、リーマンショックがあって、本⽥技研が⽅針を変え、このあたりにあった下請けがなくなっちゃったんです。かつては⼈が集まる町だったんだのに、その頃から、昼間は人が出て⾏って、夜に帰ってくる町になっちゃたんです。そういった環境の変化が、商売にものすごく影響しました。利益が出なくなったんです。どうすりゃいいんだろうって、考えていたときに、ある業者さんから通販やりましょうって話があったんです。ヤフオクを使って集客しましょうって話で、その話に乗りかかった時に、ネットで⾒たらEストアーっていう会社があることを知ったんです。それで、ちょっと話を聞いてみようと電話をかけて、それでEストアーさんでやってみることにしました。結果的に大正解でしたね。
独自の技術で完成する特別なケーキ
売られているのは、写真ケーキや、似顔絵ケーキなどいろいろありますけれど、どれが一番人気ですか?
人気があるのは、やっぱり写真ケーキです。その次に注⽬されているのが似顔絵ケーキかな。似顔絵ケーキは値段がちょっと⾼いので、広がるにはもう少し時間かかるかもしれないです。
写真ケーキの写真がとてもクリアーですね︕
クリアーでしょ。ここまでクリアーにできる写真ケーキは他にはないと思います。
実は独自のテクニックがあるんです。もちろん、写真部分も⾷べられます。これは、でんぷん質を使った食べられる紙を使って、食べられるインクを使うフードプリンターというもので印刷をかけてます。この印刷をかけるところにちょっとしたテクニックがあって、そこで鮮明さが変わっちゃうんです。 最近では、フードプリンターも流⾏り出していますが、みなさんが使っているのとは違います。2、3年前に、ちょっといじることで変わるということがわかって、ちょっと変えたんです。絵を描く機械もそうですが、全て⼯学的な話です。レンズをこういうふうに組み合わせてあげればよくなるよなと、調整したんです。
職人とデザイナーが生み出す、ケーキの上の似顔絵
似顔絵ケーキも、そっくりですね︕︕
おかげさまで、うちの職人⼆⼈に似顔絵を描かせたらトップレベルと思います。私はもうかなわない。今やネットで様々ものが出回ってますが、絶対負けないなと思ってます。ケーキに綺麗に絵を描くことを競ったら、うちは強いと思います。そこが当店の心臓部です。
絵がうまいパティシエっていっぱいいると思いますが、⼀⽇2つ描いたら、もう精⼀杯という感じじゃないでしょうか。うちがキャラクターケーキとか似顔絵ケーキを通販でバンバン売れるのは、⼈を増やした時に、指導すればすぐに戦⼒になる技術と環境があるからなんです。
あと、今のデザイナーが天才なんです。⾃分で⾔うのもおかしいけれど、何が天才かというと、20分くらいで一枚を仕上げてしまうところ。浜松に似顔絵でものすごく有名な⼈がいて、テレビで似顔絵を書いたりしている人ですが、⼀枚の絵を描くのに1週間くらいかけてる。時間はかかりますが、⼀枚8万円とか10万円とかするんです。僕がつきあっているデザイナーが描くのにかける時間は、ほんとに20分位。芸大の出身です。さらに天才だなって思うのは、絵が⽣きている。はじめは似顔絵なんて誰が書いても同じだと思っていたのですが、やはり違う、本当に違うと思います。
⾒た時に「え︕」開けて「え︕」⾷べて「え︕」、驚きが連続する商品を届けたい
今後は、秘密の商品を開発されようとしてらっしゃるとか︖
実は今、⾃分が取り組んでいることは、⼈に感動や驚き、そして興奮を与えるとか、そういうセンテンスのものを盛り上げようというものです。それとは逆に、普通のデコレーションケーキは、ヨーロッパの伝統の⾵格や落ち着きとか、そういうものが表現されたものだと思います。
似顔絵ケーキについてはは、⼿前味噌で評価するのも恥ずかしいけれど、今の⽇本で出回っている中でおそらくトップレベルだと思っています。⼀番だなって⾃信を持っているなら、⼀番狙うしかない。その時に、感動や驚きだけを強調していくことだけが、果たして、⼀流の条件か?と考えると、そうじゃないだろうなと思います。おそらく、⾵格が備わって初めて、⼀流店だろうと思うのです。No.1狙うと⾔うなら、そこやらないといけないかなって思っています。これからはそういう風格ある商品づくりをしたい。贈られた⽅が⾒た時に「え︕」、開けて「え︕」、⾷べて「え︕」となる商品を作り上げたら最強だなと思います。
加えて、包装やパッケージなど贈られた人が「なんかすごいものが届いたわよ!」というものを作り上げたいですね。そのためには、やっぱり⾵格を備えないといけないなと思います。
ギフトユースにも注目しています。恋愛関係のギフト、遠くに離れているパパにギフトというのもある。これからもっとメッセージを送るためのケーキなどいろいろ考えられる気がします。我々の仕事は、それをどう演出するかということ。それができたら、ケーキ屋さんとしての⼀つの新しい形ができると思います。