ステルスマーケティングの実態と注意すべきポイント
近年、SNSを活用したマーケティングがEC業界に欠かせない手法となっています。特にインフルエンサーによる商品紹介は購買促進に大きな影響を与えていますが、その一方で「ステルスマーケティング(ステマ)」が問題視されています。日本では2023年に景品表示法が改正され、ステマ規制が強化されました。違反すると企業やインフルエンサーに罰則が科される可能性があり、SNSマーケティングの手法を見直す必要があります。本記事では、最新のステマ規制の内容と影響、EC事業者やインフルエンサーが注意すべきポイントについて詳しく解説します。
ステルスマーケティングとは?
ステマの定義と問題点
ステマとは、消費者に広告と気づかれないように商品やサービスを宣伝する行為を指します。広告であることが隠されることで、消費者が意図的に誘導される可能性があり、誤認を招く危険性があります。企業にとっては販促手法の一つとして有効に思えるかもしれませんが、消費者の信頼を損ねるリスクがあることは否めません。特にSNS上では、インフルエンサーが自然な投稿のように商品を紹介することが多く、広告かどうかを判別しにくいケースが増えています。
消費者の誤認を防ぐため、多くの国でステマを規制する動きが進んでおり、日本でも規制強化の方向へと進んでいます。適切なルールのもとでマーケティングを行わなければ、企業やインフルエンサーが法的な責任を問われる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
過去の事例と影響
過去には、著名なインフルエンサーや企業がステマ行為を行い、炎上や社会的な批判を浴びた事例が多数存在します。
例えば、企業がインフルエンサーに報酬を支払い、広告であることを明示せずに商品を紹介させた事例が発覚し、企業側が謝罪に追い込まれるケースがありました。また、企業が自社の口コミを偽装し、消費者の信頼を裏切るような手法を用いたことで、ブランドの評価が大きく低下した事例も見受けられます。
海外では、アメリカ連邦取引委員会(FTC)がステマに対する厳格な取り締まりを行い、違反した企業に対して多額の罰金を科す措置を講じています。日本においても、消費者庁がステマ規制を強化する方針を打ち出しており、今後ますます厳しい対応が求められるようになるでしょう。
このような背景を踏まえると、企業やインフルエンサーは短期的な売上向上だけを重視するのではなく、消費者との信頼関係を築くことを最優先に考えるべきです。適切な情報開示を行い、透明性のあるマーケティングを実践することが、長期的なブランド価値向上につながるのではないでしょうか。
日本のステルスマーケティング規制の現状
消費者庁の動向と方向性
2023年10月に施行された景品表示法の改正により、ステマが「不当表示」として正式に規制対象となりました。
内閣府告示第十九号
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第五条第三号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和五年十月一日から施行する。令和五年三月二十八日 内閣総理大臣 岸田 文雄
一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの
引用 |「内閣府告示第19号」
① 優良誤認表示(景表法5条1号)
商品・サービスの品質その他の内容について実際よりも著しく優良であると誤認させる表示② 有利誤認表示(景表法5条2号)
商品・サービスの価格その他の取引条件について実際のものよりも著しく有利であると誤認させる表示③ 指定告示(景表法5条3号)
商品・サービスの取引に関する事項について消費者に誤認され、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある、内閣総理大臣が指定する表示③ 指定告示(景表法5条3号)
商品・サービスの取引に関する事項について消費者に誤認され、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある、内閣総理大臣が指定する表示
引用 | 景品表示法 | 消費者庁
③指定告示は、①優良誤認表示や②有利誤認表示には当たらない不当な表示について、内閣総理大臣が指定することによって、景表法の規制を及ぼすことができるということです。
これにより、企業やインフルエンサーが消費者を誤認させるような広告を行った場合、法的な責任を問われる可能性が高まりました。違反が認められた場合、消費者庁は企業に対して課徴金の納付命令や業務停止命令を下すことができるようになり、企業の信用問題にも関わる深刻なリスクを伴うようになりました。このため、企業はSNSを活用したマーケティング手法を見直し、法令遵守を徹底する必要があります。

EC事業者・インフルエンサーが注意すべきポイント
適法なPR手法と透明性確保
ステマ規制の強化に伴い、企業やインフルエンサーは適切なPR手法を用いることが不可欠となりました。まず、SNS上で商品を紹介する際には、「#PR」「#広告」「提供」といった明確な表記を付けることが推奨されています。これにより、消費者が情報の出所を正しく認識できるようになります。
また、企業がインフルエンサーに商品を提供する際には、事前に「広告表記のルール」を明確に伝えることが重要です。PR投稿に関するガイドラインを策定し、インフルエンサー側が誤った表現をしないように指導する体制を整えることで、ステマリスクを回避できます。
ECサイト上の口コミに関しても、虚偽のレビューや自社スタッフによる評価の操作は厳禁です。消費者が正しい判断を下せるよう、実際の購入者のレビューを基にした透明性のある評価システムを導入することが望まれます。
今後のSNSマーケティングのあり方
ステマ規制の強化を受け、今後のSNSマーケティングにおいては「透明性」と「誠実さ」がより一層重要になると考えられます。消費者は、単なる広告よりも信頼できる情報を求める傾向が強まっており、企業はこれに応える形でマーケティング戦略を見直す必要があります。
今後は、インフルエンサーの影響力に依存するのではなく、消費者にとって有益な情報を提供するマーケティングが求められるでしょう。例えば、商品の開発背景や使用感をリアルに伝えるコンテンツ制作、顧客との双方向コミュニケーションを重視したPR手法などが有効と考えられます。
まとめ
SNSを活用したECマーケティングの発展に伴い、ステルスマーケティングに対する規制が強化されていることがここまででおわかりいただけたかと思います。消費者の信頼を損なわないためにも、企業やインフルエンサーは適法な広告手法を徹底し、透明性のある情報発信を行うことが求められます。
ステマ規制時代においては、短期的な売上を重視するのではなく、消費者との長期的な関係構築が重要です。誠実なマーケティングが、ブランド価値向上の鍵となることを理解し、規制を遵守した適切なSNS活用を心がけましょう。
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