ネットショップで新規顧客を呼び込む「入口商品」の考え方と設計ポイントを徹底解説

ネットショップを一定期間運営していると、売上やリピート率が頭打ちになるフェーズに直面します。この壁を越える鍵となるのが「入口商品」の設計です。
入口商品(フロントエンド商品)とは、新規顧客の獲得を目的として設計された商品。単に価格が安いだけでなく、ブランドの価値や体験を届け、次の購入へと自然に繋がる“仕掛け”でもあります。
この記事では、入口商品の戦略的な考え方と活かし方を解説します。
入口商品とは
入口商品(フロントエンド商品)とは、ユーザーが初めて購入する際のハードルを下げ、ブランドとの最初の接点を提供する商品です。価格や魅力的な特徴を武器に「試しに買ってみよう」と思ってもらえる商品を配置し、コンバージョン率向上を図ります。
- ・セット購入や継続が不要で、まずは1つだけで試せる
- ・本命商品への導線が設計されている
- ・利益ではなく“関係構築”を優先
新規ユーザー獲得のために入口商品で広告を出すこともとても効果的な施策です。商品価格を下げたり送料無料やクーポン配布をしたりする取り組みは利益率を大幅に下げることになりますが、入口商品は次回購入に繋げることが目的であるため、まずは利益ではなく“関係構築”を優先すべきだと考えています。
入口商品のメリット
売上に直結しないと思われがちな入口商品ですが、実は中長期的な売上やブランド成長に大きく貢献します。以下にその主なメリットを紹介します。
1. 購入ハードルを下げられる
「まず試してみたい」という心理に応える価格・仕様の商品は、広告やSNS経由のユーザーに刺さりやすく、新規獲得の効率を高めます。
はじめて利用するネットショップでは、多くのユーザーが「ちゃんと届くか」「品質はどうか」といった不安を抱えています。入口商品は価格やリスクを抑えることで、心理的ハードルを下げて初回購入の一歩を踏み出してもらう役割を担います。
2. ブランド体験のきっかけになる
入口商品を通じて「思ったより良かった」「対応が丁寧だった」と感じたユーザーは、次回以降の購入に繋がりやすくなります。この初回体験がポジティブであるほど、リピート率が高まる傾向があります。
3. LTV(顧客生涯価値)を高める土台になる
入口商品の購入は、ユーザーの購買傾向や属性を知るための起点にもなります。そこからリターゲティングやCRMに活かすことができ、LTV(顧客生涯価値)の最大化が図れます。
成功する入口商品の設計ポイント
では、どんな入口商品を用意すればよいのでしょうか。ただ安くすればよい、というものではありません。以下の設計ポイントを意識することで、「売ったあと」が活きる設計が可能になります。
適切な価格設定
入口商品はあくまで「お試し」なので手が届く価格であるべきですが、安すぎると品質に不安を持たれる可能性があります。あくまで「この価格でこの内容なら試してみたい」と思える価格のバランスが大切です。
本命商品との関連性
入口商品と本命商品に関連性があると、次回購入への導線が自然になります。たとえば、本命商品が大容量シャンプーなら、入口商品はトライアルパウチなどが理想です。関連性が薄いと次の行動に繋がりにくくなります。
利益より「体験」を重視
入口商品では利益を出すことに固執せず、「買ってよかった体験」を提供することを重視しましょう。パッケージや同封物、サンクスカードなど、商品そのもの以外の要素も重要です。
よくある失敗と注意点
入口商品は効果的な施策ですが、やり方を間違えるとリピートに繋がらず赤字で終わるリスクもあります。以下の失敗例に注意しましょう。
安価すぎてブランド価値が下がる
極端に安価な入口商品を出すと、「安いブランド」として認知されてしまい、本命商品の価格帯に納得してもらえなくなる可能性があります。
本命商品と体験が乖離している
入口商品が高品質でも、本命商品が別物のように感じられる場合、期待外れという印象を与えてしまいます。一貫した体験設計が必要です。
次回購入への導線が不足している
入口商品を販売するだけで終わってしまい、その後の本命商品や定期購入への導線がないケースも散見されます。入口商品は単体で成立させず、必ず「次」を見せることが重要です。
また、入口商品購入時に次回使えるクーポンや、新規会員登録を促してポイント付与など、次回購入に繋げる施策も行いましょう。
入口商品の導線設計と活かし方
入口商品は、設計と導線がセットで機能します。ただ用意するだけでなく、どのように見せて、体験をどう次に活かすかが成果の分かれ目です。
導線① LPやバナーで「最初の1品」として打ち出す
入口商品は、「はじめての方限定」や「初回お試しセット」などの打ち出しで訴求しましょう。バナーやLPに明確に表示し、他の商品との差別化を図るとクリック率が向上します。
導線② カート離脱時にリマインドを設計
サイト回遊中やカート離脱時に、ポップアップやリマインドで入口商品を提示する設計も有効です。「迷ったらまずはこちら」「お試しで始めませんか?」と促すことで、購入への後押しになります。
導線③ 購入後のフォローアップを強化
入口商品購入後、自動返信メールや商品到着後のステップメールなどでフォローし、本命商品や定期購入への導線を設計しましょう。レビュー依頼やクーポン配布なども効果的です。
入口商品による転換率向上事例
ここからは、事例を基に解説していきます。スナックなどのお菓子から調味料まで、幅広い食料品を取り扱っているネットショップで行った取り組みです。
「低カロリー食品」シリーズの一番人気商品を入口商品として設置しました。効果観測をしたところ、F2転換率(2回目の購入に至ったユーザーの割合を表す指標)は19%という結果でした。
さらに4回目までの購入品の内訳を追ったところ、この入口商品を購入したユーザーは、その後もこの商品や大容量版、同シリーズの姉妹品の購入に繋がっていることが計測できました。また、この入口商品から入ったユーザー層は同シリーズをリピートはするものの、他の商品はあまり購入しておらず、興味を示していないことがわかりました。
この結果から、この入口商品から入ったユーザー層は「健康志向」であると想定したシナリオを作成。商品発送時に、「低カロリー食品」を作るにあたった想いや開発の背景、健康思考を意識した内容で作成したパンフレットを同梱。この商品を購入する「健康志向」ユーザーの満足度を高め、よりこの商品を「買ってよかった」と実感してもらうためです。
その結果、フォローメールの転換率が上がり、改善前に比べて約3倍の効果改善がみられました。
この結果から低カロリー食品の購入者は「健康志向」のユーザーが多いことが分かり、今後この商品のターゲットとなる明確な顧客層を把握することができました。
入口商品は「顧客体験の設計図」
入口商品は、単なる価格訴求商品ではありません。顧客との最初の接点を通じて、信頼を築き、ブランドの価値を伝え、次のアクションへと導く重要な役割を担います。
ネットショップの売上を伸ばしたいと悩まれている方は、単に「売る」ためでなく、次に「繋げる」ための入口商品を見直してみてください。
「自社商品でどのような商品を入口商品にしたらいいか分からない」「入口商品設置後の効果観測方法が分からない」と感じている方は、ぜひEストアーショップサーブの担当までご相談ください。豊富なサポート実績でネットショップ運営の力になります。