エンドユーザーの行動分析による効果的なECサイト改善
ECサイトの売上向上のために、課題の洗い出しやアクセス分析をして数字を見ても、ユーザーがどこで迷い、どこで離脱しているのかはわかりにくいものです。
そこで活用したいのがヒートマップです。ヒートマップは、ユーザーが実際にどのようにサイトを利用しているのか(どこをクリックし、どこでスクロールをやめたのかなど)を視覚的に把握するための強力なツールです。これを活用することで、サイトのユーザー体験(UX)を向上させ、コンバージョン率の向上を目指すことができます。
今回は、実際にClarityを用いて得られたインサイトから改善を行い、成果を上げた事例を通じて、どのように顧客属性を把握し、サイト改善を実現できるのかを具体的に解説します。
Microsoft Clarityのヒートマップとは
Microsoft Clarityは、ウェブサイトのユーザー行動を分析するための無料解析ツールです。
ヒートマップやセッションリプレイなどの機能を提供し、ユーザーがどのようにサイトを操作しているかを視覚的に把握することができます。これにより、クリックの集中箇所やスクロールの範囲、直帰の原因など、ユーザー体験(UX)を向上させるための貴重な情報を得ることが可能です。また、データの収集と分析が直感的に行えるため、専門知識がなくても簡単に導入・活用できる点が特徴です。
Microsoft Clarity ヒートマップには4つの種類があります。
クリックヒートマップ
ユーザーがどの部分をクリックしたかを色分けで示します。
クリックが多い部分は「赤」、少ない部分は「青」といった具合に可視化されます。
これにより、ユーザーが注目するエリアやクリックミスが起きている箇所を特定できます。
スクロールヒートマップ
ユーザーがページをどこまでスクロールしたかを可視化します。
ユーザーの多くがページの途中で離脱している場合、重要なコンテンツが見られていない可能性が考えられます。
エリアヒートマップ
ページ上のエリアごとに注目度を分析し、クリックやタッチの集中度を確認する機能です。
特定のエリアに注目が集中している場合、そのエリアのデザインやコンテンツ強化が効果的であることがわかります。
コンバージョンヒートマップ
ユーザーの行動とコンバージョン(目標達成)との関連性を可視化する機能です。
このヒートマップは、ウェブページ上のどのエリアや要素がコンバージョンに寄与しているのかを直感的に把握できるように設計されています。
これらの機能を活用することにより、ユーザー行動を視覚的に把握することができます。
どのエリアがクリックされているか、どこでスクロールが止まるのか、コンバージョンに寄与している要素は何かといった情報を得られるため、課題の特定が効率的に行えます。
サイト改善事例のご紹介
ではここから、具体的にMicrosoft Clarityのヒートマップを活用して、どのようにユーザー行動を分析し、サイト改善を実現したのか、ショップサーブの事例をもとにご紹介していきたいと思います。
あるアパレルの店舗では、売上構成比の約70%を楽天市場が占め、自社ECサイトの売上は30%にとどまっていました。楽天の売上が高いことから、自社ECサイトでも楽天サイトと同じデザイン構成を採用していましたが、その結果、モールサイトと自社ECサイトの差別化が図れず自社サイトへの送客が思うように進んでいないという課題を抱えていました。特に、自社ECサイト独自の魅力が伝わりにくい状況が続き、ユーザーが楽天に集中してしまう傾向が顕著でした。
この問題を解決するため、Microsoft Clarityのヒートマップを活用した改善に着手することとなりました。
まず、顧客属性の分析を行い、自社ECサイトの利用状況やターゲット層の特定を進めました。
分析には、Googleアナリティクス4や管理画面の受注台帳を活用し、データをもとに顧客層を詳細に把握しました。分析の結果、顧客層の中心は女性で、25歳から34歳が全体の4割、35歳から44歳が全体の3割を占めていることがわかりました。
先ほどの顧客属性の分析結果をもとに、ターゲット層の特性を予想しながらMicrosoft Clarityを利用して詳細な行動分析を行いました。具体的には、Clarityで得られるインサイトの数値を活用し、レコーディング機能で顧客ごとにセグメントしながらユーザーの操作を再生し、定性的な分析を進めました。これにより、顧客がどのようにサイトを利用しているかを深く理解し、改善すべきポイントを洗い出しました。
インサイトとは?
インサイトとは、データの背後にある「洞察」や「気づき」を指します。
Clarityのヒートマップやレコーディングから得られるユーザー行動の詳細を分析することで、改善に役立つ具体的な課題や傾向を発見できます。
主な課題と改善ポイント
分析によるインサイトから、今回のアパレル店舗の課題と改善点が見えてきました。
1. デッドクリックの改善
デッドクリックとは、ユーザーがクリックやタップをしても何も反応がない動作のことを指します。この店舗さんのサイトでは、ページの読み込みが遅いためにユーザーが何度も画面をタップしている可能性が考えられました。
このようにECサイトを運営する上で役立つ設定を、Eストアーショップサーブでは標準機能として数多くご用意しております。また、専属コンサルタントがつきますので、機能の活用方法や施策のご提案だけでなく、販売戦略や企画の立案など、EC事業における専門的な分野でのサポートもいたしますので、安心してお任せいただけます。
※読み込み速度は、Googleが提供する無料ツール「PageSpeed Insights」を使用して確認できます。
サイト全体の読み込み速度を向上させるため、画像ファイルを圧縮したり、不要なスクリプトを削除したりするなどの最適化を行いました。また、ページの読み込み中にユーザーが不安やストレスを感じないよう、読み込みの進行状況を示すインジケーターを表示する仕組みを導入しました。これにより、サイト利用中の体験を快適なものにし、ユーザーの離脱を防ぐことを目指しました。

2. クイックバックの改善
クイックバックとは、ユーザーが訪れたページから即座に戻る操作をすることを指します。これは、ユーザーが期待する情報が見つからなかった場合によく発生します。特に、このサイトではトップページのカテゴリ表示がわかりにくい位置にあることが原因の一つと考えられました。
以下は、具体的に行った改善策です。
・トップページの改善として、カテゴリリンクをファーストビュー内の目立つ位置に配置
ユーザーが目的のページにスムーズにアクセスできるようになり、利便性が大幅に向上しました。
・ハンバーガーメニューの内容を見直し、カテゴリをより見やすく整理
・メニュー内の不要な項目を削除することで、ユーザーが直感的に操作できるデザインに改良
・ヘッダーメニューに含まれていた余計なコンテンツを整理し、不要な情報を削除
顧客が目的の情報を見つけやすくなり、サイト全体の使いやすさが向上しました
この一連の取り組みにより、ユーザーが迷うことなく必要な情報にたどり着けるサイト構造を実現しました。
これらの課題点に対する一連の改善施策を実施した結果、ユーザー体験(UX)の向上が明確に見られました。まず、トップページやカテゴリ構造の見直しにより、ページ内のスクロール到達ポイントが向上し、ユーザーがより多くのコンテンツにアクセスするようになりました。特に、ファーストビュー内に重要な情報を配置したことで、ユーザーのページ滞在時間が増加し、サイト全体の利便性が向上しました。
また、ヒートマップ分析で発見された「デッドクリック」や「クイックバック」などの無駄なクリックが約70%削減され、ユーザーの操作ストレスが大幅に軽減されました。この改善により、顧客がスムーズに目的の商品やコンテンツに辿り着けるようになり、全体的なコンバージョン率の向上にもつながりました。これらの成果は、Microsoft Clarityのデータを的確に活用し、ユーザー行動を深く理解したうえで改善を行った結果といえます。
まとめ
今回はMicrosoft Clarityのヒートマップを活用し、ユーザー行動を分析してサイトを改善した具体的な事例をご紹介しました。データ分析は、専門的な知識を要するため、店舗さん独自で行うのではなく弊社の専属コンサルタントが行いました。
全ての店舗さんにコンサルタントがつくサポート体制となっていますので、管理画面の受注台帳やGoogleアナリティクス4における分析が社内でできるリソースがない場合でも、安心してお任せいただけます。
EC事業に関する課題やお悩みに対して、解決策の提案、施策の実施支援まで幅広く対応いたします。
新規開店・移転どちらでもご相談を受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。